宮沢賢治の豊饒の世界

ジョバンニ

2013年08月12日 22:32



宮沢賢治は、その37年の生涯の中で、実に数多くの詩を書いています。

それは、多種、多様、多作であり、賢治の魂が奔流のように溢れ出て

その思いが具現化されたものでした。まことに豊かな感性の世界が

そこにあります。


まあこのそらの雲の量と

きみのおもいとどっちが多い

その複雑なきみの表情を見ては

ふくろうでさえ遁げてしまう

清貧と豪奢はいっしょにこない


複雑な表情を雲のように湛えながら

かれたすずめのかたびらをふんで

そういうふうに行ったり来たりするのも

たしかに一度はいいことだな

どんより曇って

そして西から風がふいて

松の梢はざあざあ鳴り

鋸の歯もりんりん鳴る

きみ 鋸は楽器のうちにあったかな


清貧と豪奢は両立せず

いい芸術と恋の勝利は一緒に来ない

労働運動の首領にもなりたし

あのお嬢さんとも

行末永くつき合いたい

そいつはとてもできないぜ
   ~作品番号、日付いずれも不詳


一生独身をとおした、賢治の失恋の詩でしょうか。

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